畳から発生するゴマみたいな虫の謎
和室でくつろいでいると、畳の上や、窓際で、あの黒ゴマのような小さな虫をよく見かける。その場合、犯人は「シバンムシ」である可能性が非常に高いです。なぜ、シバンムシは畳から発生するのでしょうか。その理由は、畳が持つ、古くからの構造と素材にあります。畳は、表面の「畳表(たたみおもて)」と、その土台となる、厚い「畳床(たたみどこ)」で構成されています。そして、伝統的な畳の畳床には、乾燥させた稲ワラが、何層にも圧縮されて詰め込まれています。この乾燥したワラこそが、シバンムシの幼虫にとって、最高の餌であり、そして安全な繁殖場所となるのです。シバンムシの成虫は、畳の隙間や、畳表の編み目の間に卵を産み付けます。孵化した幼虫は、畳の内部、つまり私たちの目に見えない畳床の中へと潜り込み、ワラを食べながら、数ヶ月から1年以上の長い時間をかけて成長していきます。そして、十分に成長した幼虫は、蛹(さなぎ)になり、やがて成虫となって、畳の表面へと這い出してくるのです。これが、畳からゴマみたいな虫が次々と湧き出てくるように見える、メカニズムです。特に、畳替えをしてから何年も経っている、古い畳は、内部のワラの栄養価が、虫にとって消化しやすい状態になっているため、被害に遭いやすくなります。また、畳の上にカーペットや絨毯を敷きっぱなしにしていると、畳とカーペットの間に湿気がこもり、ホコリや食べかすも溜まりやすくなるため、シバンムシにとって、さらに快適な環境を提供してしまうことになります。畳の上で見かける、たった一匹のゴマみたいな虫。それは、畳の内部で、静かに進行している、見えざる侵略の存在を告げる、危険なサインなのです。